他院のレーシックの再手術

都市部にはレーシック施設はたくさんありますし、私自身が執刀した症例数を考えたら、世の中にはレーシックを受けている人はたくさんいるのだろうと容易に想像できます。

先日当院で再手術を行った方の初回手術は2007年で、レーシックを中心とした屈折矯正手術を行っている施設でイントラレーシックを受けられたそうです。

他の施設でレーシック手術を受けている症例の再手術は時々経験しますが、手術履歴が不明と言いますか・・・どんな機械でどの程度の矯正を行ったのか分からない症例の場合は、再手術の術中に予期せぬトラブルが起こることがあるので手術方法や適応は慎重になります。

今回の場合は再手術する屈折度数でもなさそうですが・・・追加矯正希望でしたので左目のみ再手術しました。初回手術が2007年ですから比較的最近の手術ですし、施術方法も分かっています。データから問題なく再手術できると考えて、通常のレーシックの再手術を行いました。初回手術が問題なく行われており、シンプルに追加矯正するだけで済みました。

最初にキレイな手術が行われていると、後々の再手術を受けた場合でも良い結果を得ることが出来ます。

レーザーのメンテナンス

レーシックで使うエキシマレーザーとイントラレースレーザーは定期的に内部のメンテナンスを行っています。

こちらはイントラレースレーザーのメンテナンスです。

内部は精密機器が満載です。精密機器なのでメンテナンスは完全に業者さんにおまかせしています。

 この金色のチップみたいな部品。これがイントラレースレーザーの重要な役割を担っているらしく、少しでも劣化が認められたら交換するらしいです。

手術手技の安全性も大切ですが、まずはレーザー機器が安全に作動することが大前提です。

角膜形状を検討する

レーシックの適応検査ではいろいろな度数、角膜形状の方がいらっしゃいます。

この症例では・・・近視度数、乱視度数はそれほど強くないです。角膜厚はかなり厚いです。角膜形状は両眼とも下方が突出して角膜中心位置が下方にズレています。

このような症例の角膜形状は円錐角膜だったり円錐類縁形状であるといえます。

 

もともとの角膜が薄い場合や近視・乱視が強く角膜切除量が多い場合は、角膜での矯正は不適応としてフェイキックIOLをおすすめするところです。

この症例のように角膜形状は非対称性が強いものの、もともと充分な角膜厚があり、術後も充分な角膜厚を残すことができる症例をどのように対応するか悩むところです。

選択肢としては・・・

①角膜形状異常として角膜を削らない矯正方法を選ぶ。フェイキックIOLを第一選択とする。

②クロスリンキングを併用した表面照射を行う。

③角膜の厚さは充分残存するのでとりあえす表面照射を行い、後々角膜形状や屈折度数が変化してきたらクロスリンキングを行って角膜線維を強化して対応する。

④手術そのものにリスクがあるので手術を行わない。

 

この症例の場合は①~③のいづれの選択肢で手術を行ったとしても、通常のレーシックと比べて確率は低いですが術後経過にわずかながらリスクがあります。また通常のレーシックと比較すると手術の費用負担は大きく異なります。

しかしながらフェイキックIOLは全国的には症例数も増えてきていますし、角膜形状異常に対してクロスリンキングを併用する術式も一定の効果が期待できるとされてます。

かわもと眼科で対応できない術式に関しては然るべき施設を紹介しています。すべての術式についてお話を聞いて、手術を受けないという選択をされるのも間違いではないと考えています。

 

眼科専門医試験

眼科研修を5年間履修すると眼科専門医の受験資格が得られます。

眼科専門医試験は毎年6月初旬に東京で行われます

8月頃の眼科学会の雑誌にその年の専門医試験の問題が掲載されます。

私が専門医試験を受けたのは2004年でした。当時も難解な問題が多かったように記憶していますが。。。今年の問題をみるとさらに難解で。。。継続的に勉強していないと忘れてしまいそうな内容から、日常診療で必要な眼科全般の知識を問われます。レーシックが普及した影響なのか、ここ数年はレーシックや屈折矯正手術に関連する問題が出題されています。今年は角膜形状の問題が出題されていました。

専門医試験でレーシック関連の問題が出題されるということは、一般の眼科診療でもある程度はレーシックや屈折矯正手術の知識が求められる時代に変化してきているのかもしれません。

何事もそうですが、最初は一部の特別な人たちが行っていることが徐々に一般的に浸透してくると、それは特別なことではなくスタンダードな日常の一部として認識されるようになります。以前はレーシックや屈折矯正手術は特殊な医療としてとらえられていたことが、今や世の中の眼科医にとって日常診療にまで浸透してきたと考えても良いのかもしれません。

手術前のデータ

かわもと眼科で屈折矯正手術を受けられる患者様には、適応検査のときに手術前の目のデータや手術の方法、術後のすごし方を記載した冊子をお渡ししています。カウンセリングでお話したことや、これから受ける手術の方法、術後の安静度が記載されています。

手術前の目のデータは将来他のクリニックを受診したときに必要になることがあれば・・・と思ってお渡ししています。たぶん再手術を他のクリニックで受けられる方は少ないと思いますが、念のために・・・です。

眼科のサプリメント

ボシュロム社はコンタクトレンズや眼科医療機器で有名な会社です。

そのボシュロム社が販売しているサプリメントでオキュバイトがあります。

このオキュバイトというサプリメントは以前から販売されていますが、最近のアンチエイジング等の流れで売れてるみたいです。オキュバイトの中身は必須脂肪酸やビタミン、ルテイン等の抗酸化物質です。

ルテインは抗酸化物質なので人体の細胞の老化の抑制に効果があります。眼科的には加齢性黄斑変性症や白内障の進行抑制に効果があるとされています。きっとその効果の感じ方は個人差は大きいと思います

なぜか一般的には“ブルーベリー=ルテイン=視力が良くなる”と認識されるようになっています。病気によって失われた視力の回復は難しいと思いますし、ピントを合わせる調節力が低下する老眼にも効果は少ないように思います。オキュバイトの商品ページには喫煙者向けのサプリみたいなのもあります。タバコ1本吸うと体はかなり酸化しそうです。サプリ買うよりも禁煙したほうがはるかに健康的だと思いますが。。。

安心レーシックネットワーク

安心レーシックNETWORKというレーシックを安全に受けるための情報提供をしているサイトがあります。http://www.safety-lasik.net/index.html

レーシック専門のクリニックではなく、一般診療も行っているクリニックや大学病院を中心とした先生方のコメントやレーシックを受けるときに役に立ちそうなアドバイスが掲載されています。慶応大学の坪田先生が代表をされているみたいです。かわもと眼科はこのネットワークには所属していませんが、この“安心の条件”はクリアしています。

この10のチェックリスト。。。かわもと眼科でも出来るだけ解りやすいカウンセリングと診察を心がけています。カウンセリングや診察ではご夫婦やご家族も一緒にお話を聞いていただくように心がけています。

 

老眼の未来を考える

人間の目は加齢にともなって調節力が低下していきます。これは老眼と言われる現象です。

この調節力は徐々に低下するため、もともと目の良い人や屈折矯正手術後の遠くが良く見える人は、然るべき年代にあると徐々に近くが見えにくくなっていきます。そのため近くを見るときに老眼鏡を必要としてきます。

“近くを見る”とは言ってもその近くと感じる距離感は個人差はあると思います。30cmくらいの距離を近くと考えている人と50cmくらい距離を近くと考える人では、近くの見づらさにも差が出てきます。

近くを見るときの対象物のサイズでも見づらいさの感じ方は異なります。新聞の文字なのか携帯電話の文字なのかパソコンの画面なのか。。。文字のサイズ、対象物までの距離は様々です。

私もレーシックを受けているので、将来的には老眼と向き合わなければならない時期はやってきます。その時どのように対応するのか?最近同年代で適応検査に来られる患者様に聞かれることがあります。

数年前なら“然るべきときに然るべき老眼の手術を受ける”でした。

しかしi-padとかスマホの進化を考えると、自分がその年代になった時に紙媒体で小さい文字を見る機会はそんなに多くないのではないかと最近は考えています。たぶん針仕事や裁縫はしないでしょうし、手術をするときは顕微鏡もあります。

香川県に白内障手術で超有名な先生がいらっしゃいますが、その先生はかなり昔にアメリカでRKという屈折矯正手術を受けられています。その先生は手術のときは裸眼で診察でカルテを見るときは老眼鏡を使っていました。年齢は今は50歳後半くらいだったと思います。クリックリーダーっていう洒落た老眼鏡を使われていました。

もちろん老眼の手術を否定することはありません。老眼の手術がまだ発展途上であるのでまだ自分が受けてみようという気持ちにならないだけです。老眼の手術で安全度・精度がレーシックと同等の手術手技が出てきたら受けてみようとは考えています。

私の考える自分の老眼対策のプランは。。。①45歳くらいからとりあえず不便なときに老眼鏡を使う ②50代前半でモノビジョンレーシックを考えてみる ③60歳くらいで遠近両用の眼内レンズを入れる、です。

このプランを覆すくらいの老眼手術の進化を期待はしていますが。。。

近視のイメージの時代変化

今から20年以上前。自分が小中学生の頃は、メガネはあんまりかけたくないモノで、本当に不便にならないとかけないって決めていました。やっぱり恥ずかしかったですし抵抗がありました。子供同士でもなんとなく学校でメガネをかけるのは授業中だけ・・・みたいな雰囲気だったように記憶しています。

当時は使い捨てコンタクトレンズはありませんでした。昔はメガネ、コンタクトレンズは本当に高額で、特にコンタクトレンズは高価なモノでした。“子供がそんなものつけてどうする?なくしたらもったいない”くらいにしか考えてもらえなかったと思います。

テレビでは野球の試合中に選手がコンタクトレンズを落として試合が中断。。。なんていうのが放送されていました。それを見て“やっぱりコンタクトレンズは不便なものなんだ”って思った記憶があります。

昔は“視力回復センター”って名前の施設があちこちにありましたけど、最近は見かけません。ああいうのは効果のないものなんだと世の中が気づいたというのもあるでしょうし、昔に比べてメガネやコンタクトレンズが気軽に購入できる価格になったのもその理由だと思います。

今ではコンタクトレンズを買いに来る小中学生はたくさんいますし、だてメガネをかける大人もたくさんいます。目が良いのにカラーコンタクトをする時代です。レーシックを受けたらコンタクトレンズは使えなくなると考えられていますが、問題なく普通にソフトレンズは装用できます。レーシック術後にカラコンを着けている人も意外とたくさんいらっしゃいます。カラコンのサイズ、種類もいろいろありますので選ぶ楽しみもあるんだと思います。レーシック術後にだてメガネをかけてファッションで楽しむ方もたくさんいらっしゃいます。

近視の解明の未来

一般の普通の人々は“人間の体の仕組みはすでに解明されている”・“最先端の医療技術があれば直せない病気はない”・“病気が治らないのはその技術を使いこなせない医者のせいだ” といった前提を持っている方は多いんだと思います。

しかし実際には人間の体の仕組みや病気の原因を完全に解明するには程遠い状況です。眼科で言うと“白内障手術で人工レンズを入れる”のは“白内障が治った”のではなく、“透明な水晶体に戻せないから人工レンズに入れ替えた”だけです。

さて近視のお話でこのことを考えてみると、学校健診で近視と言われて眼科を受診する小中学生はたくさんいます。眼科に来て“なんか近視を止める方法はないですか?”とか“なんで近視になるんですか?”とよく聞かれます。近視が進行するよりは良い視力が維持出来た方がよいですが、近視の進行の解明はそこまで進んでません。

たぶんメガネ、コンタクトレンズ、レーシック等で矯正できるので、そんな研究をする人が少ないんだと思います。科学技術の進歩を待っていても近視の進行という問題はなかなか解決しそうにないのは、世の中の早急に解決すべき生命にかかわる疾患の研究の方が優先されるからです。

きっと世の中の近視、遠視、乱視の人や老眼の人たちの中には、“いつもメガネ、コンタクトレンズをしないと見えなくて困っている人がこんなにたくさんいるんだから、さぞやこの分野の研究は進んでいるんだろう”と考える人がいるかもしれません。残念ながら前述したようにそんなに早急な解決は期待できそうにありません。

少し前までは屈折矯正の先進的な新しい方法と考えられていたレーシックですが、登場から15年以上経つと今やそれほど新しい方法とはいえません。メガネ、コンタクトレンズはなくなりませんし、レーシックなどの手術での矯正方法もこの先ずっとなくなることはないと思います。